日刊スポーツ14.11.18

48歳中嶋、また勝った/男子ゴルフ

<男子ゴルフ:三井住友VISA太平洋マスターズ>
◇17日◇静岡・太平洋C御殿場C(7246ヤード、パー72)◇賞金総額1億3000万円◇出場63人(うちアマ1人)◇曇り、8・3度、北北東の風3メートル◇観衆8973人

 中嶋常幸(48=フリー)が、また勝った。終盤猛追してきた米ツアー帰りの田中秀道(31)を冷静な勝負勘で1打差で振り切った。通算16アンダーで、同トーナメントでは15年ぶり2度目の優勝。今季は7年ぶりに優勝した6月のダイヤモンド杯に続く2勝目で「完全復活」を印象づけた。大会3連覇を狙った伊沢利光(34)は8位に終わった。

 中嶋は勝つために決断した。最終18番ロング。田中の2打目が池に入ったのを確認すると、8番アイアンをバッグから引き抜いた。「逃げ出したい気持ちだった…」が、集中して放った2打目をフェアウエーに刻み、そして3オン。残り80センチのパーパットで田中を1打差で振り切り、メガネの奥から笑みがこぼれた。

 かつての「黄金時代」をほうふつさせる最終ラウンドだった。前半、同組の田中、バデリーがスコアを伸ばす中、アプローチ、パットでパーをセーブ。2メートル以内につけた6番、9番、14番でバーディーを奪い差をつけた。背筋痛を抑えるために薬をのみながらのプレーだったが、ミスがない。17歳年下の田中も「強い」とうなるしかなかった。

 今の中嶋はゴルフを楽しめる。6月のダイヤモンド杯で勝った後、「もう一生勝てなくてもいい」と思ったが、よみがえった体は正直だ。ドライバーは300ヤードを超し、パットのラインも見える。「どん底の2000年を終えたころ、ダメな今の自分を好きになったら出口が見えた。今は毎日が新鮮ですよ」と話した。

 そのころ、ゴルフの弟子だった石渡俊彦氏を専属トレーナーにむかえ、肉体改造に着手した。「股(こ)関節の使い方、肩の回し方を教わった。謙虚な自分が勉強してきた弟子の言葉を受け入れた」と振り返る。

 今週のダンロップ・フェニックスでは、タイガー・ウッズとの勝負も心待ちにしている。「最終日に同組で回って、日本にこんなフレッシュな48歳がいると思わせたい」。復活した中嶋なら冗談で終わらせはしない。【柳田通斉】